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校正のやり方|プロが教えるセルフチェックのコツと見落としやすい箇所

校正のやり方|プロが教えるセルフチェックのコツと見落としやすい箇所

2026,07.20

校正・校閲

西田延弘

日本文章表現協会代表理事。校正・校閲経験は35年以上。小学校・中学校教材の出版社で「National Geographic World」日本版の創刊編集長などを務め、その後、日本漢字能力検定協会で出版部長、高校国語教材の出版社で編集部長などを歴任後に現職。得意分野は教育、科学、医学、自然、健康、スポーツなど。教員向け書籍や歌人・俳人辞典、大学入試向け英単語教材、動物図鑑、クレド(企業理念)作成方法に関する書籍、認定支援機関実務ハンドブック、介護ハンドブック、カナダの日本人向け雑誌など、校正・校閲実績多数。「あらゆる文章を読みやすく、伝わりやすくし、後世に正しい形で伝える」ことを心がけている。

「文章を自分で書いてはみたけれど、間違いがないかどうかが不安だな」。文章を書き上げたあとには、誰しもがそう思うはず。書き上げた文章をそのまま印刷物にしたりWebで公開したりするのは、当然NGです。人が読む文章に誤植などの間違いがあると、それだけでコンテンツの品質を疑われて読まれなくなってしまうリスクが発生します。

本記事では、プロの校閲者が実際に使っている校正技術やその手順、見落としが発生しやすい箇所などをまとめて紹介します。その観点とやり方を身に付けてセルフチェックを行えば、仕上がった文章は間違いのない、信頼されるものになるはずです。

この記事でわかること

  • セルフチェックの5つのステップと、その進め方
  • タイトル・番号・数字など、見落としが起きやすい箇所
  • 『記者ハンドブック』や音声読み上げなど、仕上げに使える道具

セルフチェックは難しい!? 見逃しが起こる原因とセルフチェックの必要性

自分で書いた文章の間違いに気づきにくい原因は、「思い込み」が起こるためです。「こう書いているつもり」であっても、よく見直せばそうはなっていない場合があります。また、現代ではワープロソフトと呼ばれるアプリなどで文章を入力することが多いのですが、ここでは変換ミスや入力ミスなどが発生します。

例えば、「多大なるご好意に感謝の念が絶えません」という文の「好意」は「厚意」を使うのが正解です。これは同音異義語なので、ワープロソフトでは間違いを発見できません。また、ちょっと入力ミスをしてしまうと、「多大なるご厚意にt感謝の念が絶えません」などと「t」などの不要な文字が入ってしまうのも、PCやスマホを使った入力ではよくあることです。

これらの間違いがそのまま放置されたままになる原因は、見直しが十分に行われていないことにあります。文章の見直しを他の人が行うことは、「校正」あるいは「校閲」と呼ばれる作業になりますが、他の人に頼む余裕がない場合や急いでいる場合などは、自分の文章を自分で見直す「セルフチェック」を行うようにする必要があります。

これを怠って間違いがある文章を公開してしまうと、品質を疑われ、その内容自体の信ぴょう性が失われてしまうことになりかねません。

セルフチェックの5ステップと見逃しポイント

セルフチェックを行う際には、見逃しが発生しやすいポイントを意識する必要があります。ここでは、プロの校閲者の経験をもとに、見逃し・間違いが発生しやすいポイントとそれを発見する手順を紹介します。

STEP1|まずはタイトルの確認を

最初に行うのは、タイトルの確認です。文字が大きかったり、分量が少なかったりする文ほどさらりと斜め読みしてしまい、見逃しが発生しやすいもの。タイトルに間違いがあったりすると、本文を読んでもらえないというリスクが発生します。

私の編集者人生は中学教材の保健体育の編集から始まったのですが、当時の大先輩から衝撃的なミスの話を聞いたことがあります。それは、教材の単元名である「患者の運び方」を「患者の選び方」としてしまい、そのまま本になってしまったというのです。

当時はDTP(Desktop Publishing:PCで印刷用のデータを作成すること)ではなく、「写植(写真植字)」と呼ばれる印画紙に文字を焼き付けて印字する方法で「版下(台紙)」を作成し、それを写真撮りしてフィルムに起こして印刷するという工程で本は制作されていました。写植を打つオペレーターが打ち間違えたのが原因ではあるのですが、私が尊敬する大先輩の編集者も校正者も、それを見逃してしまったのです。現代では、筆者が「運び方」を「選び方」と打ち間違うことはないでしょうから、起こりえない誤植ではあるのですが、注目すべきは「タイトルなので見逃した」という事実です。

タイトルは文字が大きく、分量も少ないものです。だからこそ、見逃しが発生しやすいということを心に留め、文章を書き上げたあとは、まず文書のタイトルや章名などを一通り確認しましょう。

STEP2|番号やページナンバーを確認する

次に行うのは、「①②③」などの番号の確認です。文書や記事などには「第1章」「第2章」などの章の番号や、グラフや表などの番号「図1」や「表1」などが入っています。これが「①①③」とか「①③④」などと番号が重複していたり、飛んでいたりする場合が実に多いのです。また、書籍などの場合には「目次」が存在しますが、その章や項目が指し示すページナンバーが狂っていることも多くあります。

文書などが完成したら、タイトルの確認後に全体を一通り見て番号関連を全てチェックしましょう。「合っていて当然」と思われるものが間違っていると、致命的なミスにつながりかねません。ここでのポイントは、プリントアウトした原稿に対して、確認済みになった番号などに青などのあまり目立たない色で☑などのチェックを入れることです。あとで見た際にチェック済みかどうかがわかるようにしておきましょう。

STEP3|数字関連に注目して確認する

文章の中には、さまざまな数字が含まれています。売上高や年度、グラフに対応する数値などがその例ですが、その数字だけを取り出して確認しましょう。これらの数字や数値が間違っていると「嘘だ」ということになってしまい、信頼性は地に落ちてしまいます。

数値の確認をする際は、必ず原典に当たるようにしましょう。引用した記事や文書には、誤植が含まれている可能性があるからです。

確認が完了した数字には、番号などに付したように青でチェックを入れておくようにしましょう。

STEP4|色分けをして朱入れを行う

タイトルの確認、番号の確認、数字の確認が終わったら、いよいよ文章のチェックです。文章を見ていくと、先に挙げたような変換ミスや入力ミスなどに気づくと思います。そのような必ず直すべき間違いには赤で朱入れを行います。また、「こうした方がよいのではないか」と迷う箇所も出てくるかもしれません。そういう箇所には赤ではない色、たとえば見分けがつく緑などの色で朱入れを行います。そうすれば、あとで再度検討することが可能になります。

セルフチェック作業を続けていくと、後半になって「やっぱりこうしよう」と思うことも出てきます。その際に緑の朱入れを確認すれば、全体を矛盾なく、統一した論調で完成させることができます。

STEP5|文章全体を再度見直す

朱入れに沿って修正を行ったら、最後に文章全体を再度見直します。見直してみると、単純な見逃しを含め、修正すべき箇所が見つかるはずです。ですので、この最後の工程を怠ってはなりません。間違いがそのまま世の中に出る原因の多くは、この工程を怠ったことにあると言っても過言ではありません。ベテランの校閲者ならば、この工程を複数回行うこともあります。「何度読み直しても問題なし」。こうなってはじめて、セルフチェックは完了です。

見逃しを防ぐための工夫

見逃しを防ぐためには他の人の目を通すことが第一ですが、それでも見逃しは発生することがあります。ここでは、見逃しを防ぐための工夫を紹介します。

『記者ハンドブック』などの利用:「これってこういう表記だったかな?」と迷う箇所があれば、『記者ハンドブック』(共同通信社)などで必ず確認するようにしましょう。『記者ハンドブック』は「新聞用字用語集」として出版されたもので、新聞で使用されている表記の基準が載っています。なお、本記事が参照しているのは、共同通信社『記者ハンドブック 第14版』(2022年)です。漢字にする(とじる)か、ひらがなにする(ひらく)かなどで困った際にも参照するとよいでしょう。「誤りやすい語句」や「登録商標と言い換え」などの資料も充実しており、必携の1冊です。

テキスト読み上げアプリの利用:完成した文章をテキスト読み上げアプリで読ませてみると、間違いや不自然な箇所に気づくことができる場合があります。自分で声に出して読む方法もありますが、読み上げアプリを使うとより客観的に文章を吟味することができます。近年の読み上げアプリは、より自然に読み上げてくれるものも多くなってきました。セルフチェックでは活躍してくれることでしょう。

自分の癖を知るためにプロを利用する:文章というものは、知らず知らずのうちに書き手の癖が出るもの。ここではセルフチェックの方法を紹介しましたが、一度プロの目で自分の癖を指摘してもらうのもよい方法です。指摘された癖は、今後文章を書く際に注意すべき点として記憶に残り、よりよい文章を書くステップとなるはずです。自分への投資として依頼してみるのもよいでしょう。

まとめ

セルフチェックは、自分で自分の書いた文章を校正する以上、見逃しが発生しやすいものです。できれば他の人の目を通しておきたいところですが、その前にもステップを踏んでしっかりとセルフチェックを行うことが必須です。自分では気づかない間違いもあれば、自分でないと気づかない間違いもあるもの。ポイントは、タイトルや数字などはまとめてチェックを行うこと、そして客観的に自分の文章を見ることです。

また、自分の文章に自信を持っている人であっても、ステップアップに必要だと思って一度はプロの目で見てもらうことをおすすめします。

よくある質問

Q1. 難しい漢字を使っても大丈夫?

A.「酷い」「然し」などの漢字を文章に入れたほうが、格調が高くなると思っている方もいるかもしれません。しかし、読み手にしてみれば、「読みにくい文章」だと映る可能性もあります。新聞などのメディアでは、「常用漢字」を基準にして表記を行っています。常用漢字は内閣によって告示された法令や公用文書、新聞などで現代の日本語を書き表すための漢字使用の目安で、現在は2010年に告示された2,136字です。ですので、常用漢字を使用してそれ以外の漢字は使用しないことが理想でしょう。

しかしながら、「餃子」の「餃」などは常用漢字ではありませんが街中にあふれており、大抵の人は読めると思われます。読み手の年齢層などを意識して使い分けてもよいでしょう。

Q2. Wordなどの校正ツールは信用できますか?

A.冒頭でも紹介した「好意」と「厚意」など、同音異義語などはワープロソフトでは判別できない場合も多くあります。しかしながら、単純な入力ミスなどを発見するのはお手のものなので、校正ツールを使わない手はありません。校正ツールも使い、それだけに頼らずにチェックをしっかりと行うように心がけましょう。

Q3.校正と校閲はどう違うのですか?

A.校正は、誤字脱字や変換ミス、表記の不統一など「文字・表記の誤り」を正す作業です。一方の校閲は、事実関係や数字、固有名詞、引用・出典が正しいかまで踏み込んで内容の正確さを確認する作業を指します。セルフチェックでは、まず校正で表記を整え、次に校閲の視点で「その情報は事実か」を確かめると、抜けが減ります。

Q4.セルフチェックはいつ行うのが効果的ですか?

A.書き上げた直後は「思い込み」が残りやすいため、可能なら一晩、少なくとも数十分は時間を置いてから見直すと、客観的に読めて誤りに気づきやすくなります。加えて、紙に印刷する・文字サイズやフォントを変える・音声で読み上げるなど「見え方を変える」ことも、目を慣れさせないための有効な工夫です。

出典一覧

『記者ハンドブック第14版』共同通信社、2022年[書籍]

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